たまに、無性に椎崎さんの小説が読みたくなります。
物凄く面白いストーリー展開が待っている訳でも無く、登場人物達に萌えを期待するでも無く…。
強いて言うなら、やや几帳面で静謐なこの方の文章に触れたい、というモードが突如発するのです。
だから、この作品の発売当初は全く食指が動かなかったのに(前作の不味さが後を引いてもいた)、
急遽読みたくなりサクッと購入→読了しました。
面白かったです!ご馳走様でした♪
私は、完全無欠を装う攻めが唯一人の受けに心奪われ、人生が足元から崩れていく物語が好きだ。
遠野春日さんの『LOVEラブ』やうえだ真由さんの弁護士シリーズ、夜光花さんの『凍る月』など…。
↑の作品に登場する攻めは受けへの恋心が思い通りに行かず、人生の修正を余儀なくされている。
妥協に妥協を重ね、もはや“倣岸不遜”とは呼べない“へたれ”属性に達していく様子が痛快です。
今回の椎崎さんも実はこの手のタイプに近いのですが、攻めの瀬尾はそこまで“へたれ”ではない。
何故なら、主人公の征は子供じみた振る舞いをする“癇癪”を装う程度には計算をする子でしたが、
基本的には思慮深くて、やや意地っ張りで、等身大に人間味溢れる真っ当なキャラだったからです。
(翻ってみるに、前述の作品群の受けは多かれ少なかれ人間というより“猛禽”の気があるのだw)
だから、主従愛の逆転劇BLの嚆矢(?)であられる華藤えれなさんのスレイヴァーズシリーズが、
設定的には一番近いけれど、読後に着地しているポイントはかなりかけ離れている印象を受けます。
とまれ、瀬尾はあどけない幼少時代の征に魅了され、彼の人生のあらゆる“障害”を取り除くコトを、
人生の目的と定めるようになる…彼の“才能”と“将来”はもっと多方面に開花されて良い筈なのに。
が、瀬尾は征のサーヴァントに徹し、“保護者”役を演じ、それがずっと続けば良いと願っています。
てことで、この関係を
清算しなくちゃいけないと思っているのは、むしろ年少の征の方なんですな。
征には、“傷”があります。
彼の“可能性”を一端を絶ち、母親との関係が断絶し、瀬尾との関係が強化される契機となる傷が。
征はその傷に絶望と憎悪と自責の念を感じているのですが、“陶芸”との出会いで人生が一変する。
土を練って、ロクロを廻して、一心不乱に作業を続けるコトで、彼の凝った心は昇華していきます。
焼きあがった“器”は瑞々しくて美しく、自分を変えたいと思っている征に更なる勇気を与えてくれる。
そんな陶芸体験を経て、征は瀬尾への恋心を封印し、彼から自立して離れる覚悟を決めるのです。
畢竟、征の決断に対して「ちょっと待った」コールの声をかけるのは“過保護”な瀬尾です。
二人の関係の進展に自ら踏み込めなかった(主導権を握れなかった)瀬尾は、十分にヘタレでした。
すったもんだの末に、ようやっと二人は互いに本音をぶつけ合い、主従関係を乗り越えるのですね。
化けの皮が少し剥がれ、瀬尾の本性も根性も性癖も実はそれほど誉められたモンじゃないことが、
読者にようやくきちんと
明示されるので、読後もスッキリ♪です(笑)。
欲を言えば、私はこの小説はどちらかと言うと瀬尾の攻め視点で読んでみたかった。
そして、あどけない少年の征に感じた“劣情”の部分について、もっと詳しく吐露して欲しかったかな。
ちゅーか、瀬尾!読者に対して君はもう少し正直に口割ろうよ、ねえ。
<作品データ>
・椎崎夕『非保護者』(北畠あけ乃・画、大洋図書シャイノベルス)2008.5
以下は備忘メモ。
英田さんの『ライクファーザー…』を読んだ時も、他作家の類似設定の時も気になったのですが、
身体の損傷や欠損に関する詳細(指が動かないor足を引き摺る)を描写するのは無論良いとして、
その理由を最初に主人公に語らせちゃうのは、いささか勿体無いような気がするんですよね。
たいていの場合、回想シーンが入るので後々その原因の具体的なシーンは出てくるわけだし…。
その理由は“お楽しみ”として隠されていた方が、小説としては美味しいと思うんだけどなあ。
<拍手お礼>
・entry820、822に拍手ありがとうございました♪
>822にコメントして下さった方へ
華不魅さんの作品は待ちすぎて、待ちすぎて、展開がもはや記憶の彼方に飛んでます、私。
コミックスを当たろうにも、押入れの奥深くに眠っている筈だから簡単に引っ張り出せませんし。
あきさんの作品もお好きなんですね〜、好みが似ているようでとっても嬉しいです♪
但し、あの雑誌は(小声になりますけど…)立ち読みで十分な印象です、私は買いましたが(笑)。
以下は備忘メモ。
英田さんの『ライクファーザー…』を読んだ時も、他作家の類似設定の時も気になったのですが、
身体の損傷や欠損に関する詳細(指が動かないor足を引き摺る)を描写するのは無論良いとして、
その理由を最初に主人公に語らせちゃうのは、いささか勿体無いような気がするんですよね。
たいていの場合、回想シーンが入るので後々その原因の具体的なシーンは出てくるわけだし…。
その理由は“お楽しみ”として隠されていた方が、小説としては美味しいと思うんだけどなあ。
<拍手お礼>
・entry820、822に拍手ありがとうございました♪
>822にコメントして下さった方へ
華不魅さんの作品は待ちすぎて、待ちすぎて、展開がもはや記憶の彼方に飛んでます、私。
コミックスを当たろうにも、押入れの奥深くに眠っている筈だから簡単に引っ張り出せませんし。
あきさんの作品もお好きなんですね〜、好みが似ているようでとっても嬉しいです♪
但し、あの雑誌は(小声になりますけど…)立ち読みで十分な印象です、私は買いましたが(笑)。
コメント&TBありがとうございます〜♪
私も椎崎さんの密度の濃い(悪く言うとちょっと説明がくどい)文章が結構好きですヨ。
私はお察しの通り重度の高遠さんフリークですけど、椎崎さんの比喩表現も胸に沁みてくる時があって(本作では、象徴的なアイテムとして扱われている土鈴や陶器、あるいは時折現在の主人公の征の姿から子供時代が透けて見えるような幻想的な空気のようなモノとか…うーん、私の説明下手ですな…)それらの表現を味わいたい気持ちになるんですよね、残念ながらいつもじゃないんですけど。
逆にエロが読みたい時には、全く向かないBL作家さんの一人であります(笑)。
今回は私の場合、直前に読んだのが夜光さんの淫乱神父だったので、足して割って丁度良い感じになりました。
そして、瀬尾。
ちょっとムッツリでカッコつけ過ぎだと思いません?
私のへたれセンサーが反応しているので、彼も絶対“弱み”がある筈なんだけど、読者の前では仮面被ったままだし…。
私の好きな感じの攻めだから、余計に「もうちょっと腹割って話そうや〜、兄ちゃんw」って絡みたくなるんですよねー。
いや、私のオバチャン根性もみっともないっすネ(笑)。
ではでは。