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君にもわかるISO 

本作品、私にしては珍しく二度読み返したため、感想を1日跨いでしまってちょっと残念…。
更に今回、BL小説を読むときはまずしないのですが、付箋を大量に貼り付けております。
様々な点から本当に興味の尽きない作品でして、結論から言えば大変面白い作品でした。

さて本作品は、通称『認可証シリーズ』の第5弾にあたります。
皆さんご存知の喜美津化学は、今回ちまたで大ブームのISO取得に四苦八苦しております。
若手有望株であり、現在のところ同企業にて唯一の大卒学歴保持者の主人公である阿久津弘は、
当然のごとく、この面倒ごとのリーダー役を引き受けるハメになるのですが…。
一方プライベートな面で彼は、ひょんなことから(降って沸いた偶然の災いとも言えます)、
恋人である前原の父親に、二人の関係がばれてしまってさあ大変といった状況に陥ります。
いずれも、彼にとって短期間に決着を付けなければならない問題となってしまい、
阿久津は必死で悩み考え、最善の是正措置を講じようと奮闘するわけなのですが…。

これがですね、結果を言えばいずれも前原親子の方が一枚上手だったのですよね。
阿久津の頭には、是正措置を講じる考えしか思い浮かばなかったようなのですが、
彼らはそれを、ISO流で言うところの予防措置で対応してくるのですよね。
いや、本当にオチに驚かされてしまいました…コロンブスの卵的と言っても良いかも知れません。

実は、一見というか当初の前原父が阿久津に要求してきたのは是正措置だったのですが、
(つまり、換言すれば「二人の関係を清算しろ」「白紙に戻せ」的な要求です)
本音は二人の関係を案じ、今後の予防措置としての対応を迫っていたのが後になって判明します。
(曰く、偶然にも二人の関係がバレたのが比較的理性的な人柄の前原父だったから良かったものの、それが今後別の相手や社会にバレたらどうするつもりだったのかというお話)
私はこの前原父の腹芸には見事してやられたと言いますか、いや、心底惚れ込みましたよ。
今回のストーリー上の1番の立役者でしたね。

さて、あえて↑で是正措置だの予防措置だのといった勿体まわった言い回しをさせて頂きましたが、つまりこれががISO的な言い回しでして、阿久津が指摘するように随分とまた観念的な理念です。
実態や現状をいったん括弧描きにして括るあたり、私の大好きな構造主義と同じ匂いがします。
今回阿久津がいつも以上に積極的に考えたくなかった現実にも、見事に対応しております。
私個人は、実はこの観念的現実から遊離した発想は案外嫌いじゃないんですよね。
特にシビアな現実を前にしたときは、逆にこの種の観念論は何処かソソるモノがあったります。
まあ、逃避と言えば逃避なんですが…。

このISO的な概念は一方で何とはなし、大昔のチャップリンの映画も彷彿させます。
つまり、人間すらシステムと一環として、チャップリン的には歯車の一部として、
一緒にシステム化、機械化されていく辺り好対照をなしていると言えるのではないかと。
チャップリンの時代には危機感に過ぎなかったものが、現実化され規格化されている訳でして、
私もこういう発想が嫌いじゃない辺り、どうも社会全体の感覚が麻痺しちゃっている模様…。

対して本作品の阿久津の場合と言えば、そんなISOの推進役で事実上のリーダー役にも関わらず、
そういうISO的発想のシビアさも知りつつ、その上でISOを克服しろと激を飛ばすのです。
人間はISOに負けちゃいけない、それを踏み台にして乗り越えて、更に高みを目指して、
つまりより良い会社を作っていきましょうなんてコトを言い出しますから、心強いです。
畢竟、オジサンのアイドルになってしまうのも仕方の無い話でして…(笑)。

阿久津の論に準じれば、全てをシステムの所為して安穏と生きる道はな選択肢ですが、
それこそ非人間的で、被システムの申し子になってしまっている反省すべき負け犬気質なのだとか。

「歩みが遅ければ止まっているのと同じ」

前原じゃないですが、かなり耳の痛い話です。

で、結論。
難敵ISOと前原父(≒世間、社会)、この二つのコントラストが実に巧妙に仕掛けられており、
鳥城さんの筆力の安定感には本当に圧倒されます、いつ読んでも楽しい素敵な作風です。
そして、今後このシリーズは、二人の近親者へのカミングアウトが物語の焦点になってくる模様。

「後でバレるのが一番まずい」

と本人達も申しておりますから、自ずとそちらへテーマがシフトして行くのでしょうね。
まずは、前原母ですかね…もうバレている気もしなくは無いのですが…。
今後のシリーズ続編も楽しみです。何はともあれ、ご馳走様でした♪

<作品データ>
鳥城あきら『君にもわかるISO』(文月あつよ・画、二見書房シャレード文庫)2006.12
 ISBN4-576-06187-9
君にもわかるISO~許可証をください!5~ 君にもわかるISO~許可証をください!5~
烏城 あきら (2006/11/28)
二見書房
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↓はBLにしては珍しい付箋メモ。



ISO:国際標準化機構(International Orgabnization fot Standardization)
 ・『品質保証』…製造業(メーカー)がお客さまへ提供するサービスの一環
 ・日本的曖昧さ(『あうんの呼吸』『暗黙の了解事項』)を受け入れない
 ・PDCA(plan<計画>、do<実行>、check<検証>、act<活用>)
 ・強力なリーダーシップのもとで実現されるトップダウン方式のシステム
 →人間の判断=相対的
 ・『是正措置』…発生した不具合を改善すること
 ・『予防措置』…不具合の発生自体を回避すること
⇒観念的で面倒

日本的な社会システムを分析した名著と言えば、中根千枝の『タテ社会の人間関係』ですが、
今回この小説を読んで改めて、中根さんの研究書を読み返したくなりました。
でも、あのガチガチに硬すぎる文体はちょっとシンドイんですよね…。
未読の『~力学』の方をあたってみようかしら?

<作品データ>
・中根千枝『タテ社会の人間関係』(講談社現代新書105)1980
 ISBN978-4-06-115505-3
(4-06-115505-9)
・中根千枝『タテ社会の力学』(講談社現代新書500)1978
 ISBN978-4-06-145500-9
(4-06-145500-1)




[ 2006/12/02 15:43 ] novel BL | TB(3) | CM(6)
こんばんは、ゆちゅ♪さん。
コメントありがとうございます~。
こちらからも、後ほどTB送らせて頂きますね♪

このシリーズは本当に親父天国ですねー。
記事では全く触れていなかったのですが、今回のお話では、沢村組長の役回りも素敵だったと思います。
(沢村氏はこの小説じゃ若手なんですけどね)
まあ、でも前原パパが一番お気に入りですね♪
娘の元婚約者の非常識な(でも現実的に存在するんでしょうね…)親御さんに対する、毅然とした態度が本当にカッコ良かったです。

カミングアウトはシャレードレーベルのシリーズモノの大半が通る道ですねー。
他のBLレーベルでは、まずお目にかからないテーマだと思います。
この二人だと、どんな展開になっていくのでしょうか。
(双方母親にはバレている気がしなくも無いんですが…)
本当に、続きが待ち遠しいです。
[ 2006/12/10 20:34 ] tatsuki [ 編集 ]
tatsukiさん こんばんは!

遅ればせながら感想アップしましたのでお邪魔致します。

今回はホントに前原父にしてやられました(笑)
最初の阿久津との面談シーンでは善きにつけ悪しきにつけ感情が見えないことで気持ち悪いおっさん…というイメージを持ってしまったのですが、スタートのマイナスから現在は針を振り切りそうなポイントアップです♪

もともと平均年齢の高い本でしたがますますオヤジ天国じみてきましたね…た、楽しい♪(笑)

阿久津と前原の仲も揺るぎないものになってきてますし、今後必ず来るであろうカミングアウト編も、どんなふうに二人で乗り越えてくれるか楽しみです!

また後日TBしに参りますので、よろしくお願いしますね♪
[ 2006/12/10 01:35 ] ゆちゅらぶ♪ [ 編集 ]
こんばんは、mimuさん。
コメント、TBともどもありがとうございます。

私も当初の前原パパは、「何だこの人は!」という感じでしたね。
あまりにテンプレートなエリート風情で、ちょっと鳥城さんらしくないなあと思っていたら…。
最後に内実が明らかにされて…見事に騙されましたよ(笑)。
「そう、きたか」みたいな。
ISO絡みの会社のゴタゴタとプライベートゴタゴタが巧く対応していて、本当に面白かったです。
このシリーズは、実は途中のマンネリ化にちょっと飽き気味で暫く距離を置いていたせいか、
今回余計に楽しく読ませて頂きました。
私どうもシリーズ第4弾を買っていないみたいなので、今度買ってきて読み返そうと思っております。
(シャレード本誌を買い続けているので、本編自体は読んでいるのですが…)
それでは、また。

[ 2006/12/04 20:38 ] tatsuki [ 編集 ]
tatsukiさん、こんにちは。

私も「ISO」という言葉は聞いたことはあっても恥ずかしながら意味は知りませんでしたし、調べてもようとも思ってませんでした。
私自身も家族も「ISO」に関係ある環境にいないので、これを読まなかったらずっと知らないままだったと思います。
ですが、そんな何も知らない状態で読んでも、大変わかりやすかったし、そして凄く面白かったです。

前原父は、只者ではなかったですね。
「大人の腹芸」は見事でした。
それを打破してしまう、前原と弘の若さとか真っ直ぐさとか想いとかがまた、いいな、と思うんです。

続きも楽しみですね。
TBさせていただきます。よろしくお願いします。
[ 2006/12/04 08:54 ] mimu [ 編集 ]
こんばんは~ヒトコさん、コメントありがとうございます♪
私実は、ISOなるものは聞いたことのある単語だなあ程度の知識しかありませんでした…。
ビジネス書棚に、それ関連の書籍があることは知っておりましたが、
その実態を調べてみようなんて思ったこともありませんでした。

ヒトコさんの「元気をもらった」というお気持ちよく分かります。
私もこの作品を読むと、仕事に対するモチベーションがちょっと上がります。
弘の若さも良い刺激になりますしね。
サラリーマン賛歌として世のオジ様方にもオススメしたい所でもありますが、
彼らには相容れない描写も結構濃い目に用意されているのが難点でしょうか?(笑)

こちらからも、後ほどTBお返しさせて頂きますね。
ではまた。
[ 2006/12/03 19:59 ] tatsuki [ 編集 ]
ISO9000の頃は、世間や私のまわりでも良い意味で話題に上っていたんですが、近頃あまり聞かなくなっていました。いつの頃から、「様々な業種がISO取得に乗出して、それ自体にかなりの費用もかかるしISOに振回されてる」というダンナの愚痴話などもあって、マイナスのイメージを持つようになってました。許可証シリーズの新作は楽しみにしていたものの、最初は「今更ISOか・・・」という気もしてたんですが、読んでみたらそんな事は杞憂に過ぎない面白さでした!

何といっても、マイナスなイメージも踏まえた上で「ISOに負けたくない、屈服させる」と言い切ってしまう阿久っちゃんに完敗です。多少青臭くてもいいんです、若いんだから。この作品のそういう所に感動したし元気をもらったんだなぁと、tatsukiさんの感想を読ませていただいてあらためて思いました。
それに、私なんかは竹中さんの様に思っちゃう方なので、現場を考えた上で予防措置で応戦(?)した前原にも感心しました。ほんとに良いなこのふたり。今後も更に楽しみです。
うちでも感想を書いているので、TBさせていただきます。
[ 2006/12/03 17:22 ] ヒトコ [ 編集 ]
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