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徒花 

昨日読み終えたのですが、あまりにもあまりなストーリー展開に呆然としてしまいました…。
私が個人的に感銘を受けたあの『夏蔭』や『夜夜の月』をこの世に送り出した方と、
本当に同一の方が書かれた作品だったのでしょうか?

水原さんは、残虐的な性表現が確かに個性的な作風ではありましたが、
その暴力性の背後に見え隠れするカタルシスこそが魅力の源だったはずです。
なのに本作品ときたら、いつも以上に凄惨で暴力的なシーンが描かれてはいたものの、
そこには作品としての意味が全く感じられず、よしんばそこに何らかの意図があったにしても、
恐らく殆どの読者にソレが伝わらなさそうな印象を受けました。
私が個人的にこの著者に入れ込んでいた分、いつも以上にやるせない気分なのかもしれません。

本作品は、実は一種のコメディBL作品だったのかもと思えなくも無いのですが、
コメディに還元するには、余りにも洒落にならない状況に追い込まれるのですよね…。
私、何となく一休さんの頓知話を思い出してしまいました。

「このはしわたるべからず」

結構有名な話だったと思います。
一休さんは橋の前にあるこの立て札を読んで、堂々と橋の真ん中を渡るという話なのですが、
この作品の主人公の和彦君も、何の根拠があったのか私には分からなかったのですが、
脆そうな橋の真ん中を堂々と歩いて、案の定底板を踏み抜いて河に落ちてしまうのです。
読者の誰もが、その橋は洒落にならない位危険だと気づいているにも関わらず、です。
そこで「えへへ、落ちちゃった」で済めばコメディ(ギャグ)としてはありかも知れませんが、
水原作品がそんな温さを許容するはずは無い訳でして…。
河に落ちた主人公は、文字通りある意味いつも以上にドエライ目に合ってしまうのです。

従来の水原さんの作品では、攻めの地雷が見えずに受けが常に緊張を強いられるのですが、
(事実、この緊張感が水原作品の魅力の一つだったとも言えるはずです)
今回の作品の場合、割と初めからその種の地雷が読者にも主人公にも見えていたはずなのです…。
が、本作品の主人公が己を過信していたのか、もしくは特別と思っていたのか、
あえて自ら地雷を踏む道を選ぶのです(ちょっと属性に電波入っているってのが正解なんですが)。
一読者としては、本当に驚いたというか呆れたというか…。

ストーリー中盤、主人公の和彦君はタイへ出張に出向くことになるのですが、
そこで、かの国で終身刑を言い渡されているとある男と出会います。
この男と日本にいる彼の家族の関係が、後の主人公とその相手の関係を暗示しているのですが、
この点に関しても、イマイチ作品装置として生かしきれていなかったように思えました。
かの地の男は、もう二度と家族に会えない孤独を抱えて生き続けている訳ですが、
主人公サイドは結果的に時間軸にしてせいぜい4年ちょいしか壁の隔たりは無かったので、
積年の孤独な思いが成就する感すらも弱いのですよね…。
実際、三十路一歩手前の我々にとっての4年なんて、本当にあっという間なんですよ。

うーん、角度を変えても乗り切れないイマイチなお話でした。
期待していたので、ちょっと本当に残念です。
次作品は暴力描写が多少薄くても、もう少し共感を得やすいものを読みたいですね。
ご贔屓作家だった分、感想がかなり厳しくなってしまいました。

<作品データ>
水原とほる徒花』(水無瀬雅良・画、海王社ガッシュ文庫)2006.12
 ISBN4-87724-551-0
徒花(アダバナ) 徒花(アダバナ)
水原 とほる (2006/11/24)
海王社
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[ 2006/11/28 19:53 ] novel BL | TB(1) | CM(0)
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[2013/04/22 13:28] scarpe hogan
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