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夜の言葉 

先日読了しました。
あの『ゲド戦記』の原作者による文学評論です。
私は彼女の小説を一切読んだことがありません、まず断っておきます。
今年の夏に見た映画の『ゲド戦記』は正直つまらなかったです…。

さて、本題。
私は以前から何となく、BLとファンタジーやSFというジャンルが似ているように思っていたのですが、
その理由がこの評論を読んではっきり致しました。
BL自体がファンタジージャンルの一種であるという説もさることながら、
内容がどうというよりも、両者をとりまく文学的環境というか立場が似ているのですね。
それはつまり、未だ公正さを欠いた批評の下に置かれているジャンルであるという共通点。
ファンタジーやSFを見下し歯牙にもかけない有識者の見解も大問題ですが
ジャンル内のファンによる外側への拒絶反応にも問題があると思われます。
グウィン女史による、この辺の忌憚無き痛烈な批評は非常に心地良かったです。

但し、この方は所謂パルプ・フィクションや通俗小説、官能小説等に対して、
彼女の愛するファンタジーやSFを汚している汚物として排除する思考の持ち主でもあります。
本文で明言はしておりませんが(当たり前ですが)、多分ハーレークイーンやBLを知ったら、
これらのジャンルを全面的に叩き潰そうとする人なんだろうなあと思いました。
この辺は私なんかとは意見が合わないので、割り引いて見なければいけませんね。
時代が時代ゆえか、喧々煌々とフェミニズム思想を語っている箇所も多く、
その辺が苦手な方はやっぱり要注意なエッセイです。

あと、余談ですが文体に纏わるエッセイが日本語に翻訳されると、さっぱり状況が見えてきません。
無理に翻訳せずに、原文載せてくれたほうがありがたかったです。

兎にも角にも、割り引いてみればなかなか示唆に富んだ力強いエッセイだと思いました。

<作品データ>
・アーシュラ・K.ル=グウィン『夜の言葉 ファンタジー・SF論』(山田和子他・訳、岩波現代文庫)2006.5
 ISBN4-00-602102-X
夜の言葉―ファンタジー・SF論 夜の言葉―ファンタジー・SF論
アーシュラ・K. ル=グウィン (2006/05)
岩波書店
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↓はいつもの備忘メモ…長めなので注意




<女史の考え>
・文学のジャンル・カテゴリー分けは、政治的な戦略にすぎない
・純文学や主流小説(メインストリーム)が他のタイプの小説と比べて優越している訳ではない

<サイエンス・フィクション>
・このうえなく興趣に富む現代小説の一種(現代の神話
・「神話」…まだ合理的に理解することのできない事柄を合理的な言葉によって説明しようとする試み=象徴言語
 ※ユング型…意識と無意識の世界をつなぐ過程でのみ生まれてくるモノ(相補的)
 ※フロイト型…本来の内容を隠すための偽装
・「盗用」…健康な文学には欠かせない機能

<ファンタジー>
1.ゲーム=秘められた動機をいっさいもたない純粋の真似事
 ゲームのために行われるゲーム=最も賞賛すべき形の現実逃避
2.=存在とかかわりあい、理解するための代替的テクニック
 リアリスティックではないがシュルレアリスティックな、スーパーリアリスティックな現実の高次化
 ∴集合的無意識=内なる自己の言葉
  ※「二次的ではない原初的段階の思考形態を用いている」(フロイト)
  ※自我が内へ向かって“自己”を同定する領域(ユング)→共同体成立の基盤
 ⇒詩や神秘主義や狂気に近いので危険
3.“日常性からの離脱”
 ⇒あなたを変えてしまうかもしれないから危険

※アメリカの場合…ファンタジーは大人の読み物ではない
・児童向け(ジュヴナイル)
・十代向け(ティーン・エイジ)
・青年向け(ヤング・アダルト)
↓ cf.イギリスの場合…ファンタジーは年齢を平等化する偉大なジャンル
ピューリタン的価値観…たのしみは価値ではない(=自己陶酔or逃避)
⇔女史は想像力の効用を力説
想像力<imagination>(『ショーター・オックスフォード・ディクショナリー』より)
 1.想像すること。五感に実感されないものを抽象概念として心に思い描く行為。
 2.いまだ現前せぬ行為ないし出来事を頭のなかで考察すること
 ⇒“人間にとって絶対不可欠な能力”=知的感覚的な自由なあそび(フリー・プレイ)
・あそび<play>=recreation=再創造<re-creation>
 ⇒既知のものを組み合わせて新たなものを作り出すこと
・自由<free>⇒目先の実益に執着しない自発的な行為

<性の問題>
ex.ゲセン人の性の構造/慣習(←著者の創作による設定の両性社会)
当然↑は未読ですが、なるしまゆりさんの『原獣文書』における新大陸社会に似ている気がします…
<目的>
・自己発見的装置(ヒューリスティック・デバイス)
・思考実験
 ※セックス=超自然的魔力
 →未成熟な社会、未成熟な精神はセックスをめぐる大きなタブーを築いてしまう
  成熟した文化、未成熟な精神は、タブーや法を統合して、内的な倫理規範をなすことができる
<結果>=欠陥設定である
 ・異性愛社会にしてしまった
  ∴同性愛社会に対する性社会意識の欠如
 ・男女両性具有者ではなくて男性に見える(主語の問題=he)
 ⇒男性読者にとっては安全なファンタジーだが、女性読者にとっては物足りないファンタジー設定
彼/彼女を包括する日本語って何だろ?日本語は主語が落ちやすいから、そのこと指しているのでしょうか?

<文芸批評基準>
1.論理の一貫性とそれなりの科学的確かさ
 ・ファンタジー…ルールは自分で作ってよいが、作ったのちはそのルールに従う
 ・サイエンス・フィクション…ルールは自分で作ってよいが、そのルールには制限がある
 =科学によって実証された結果を侮蔑するものであってはならない
 =既知のものとして知られていることを否定してはならない
 (↑を超えた場合は、真の仮説or説得力のある筋道だったい偽説が必須)
 つまり、寿たらこさんの『SEX PISTOLS』はSFで、松岡なつきさんの『FLESH&BLOOD』がファンタジーなんですね
2.文章/表現の能力

<SFゲットーの内/外>
 内…文学として評価されることを望まない(二流の存在で満足)
 外…そのジャンルを見下す
 ↑反小説の立場

※ジャンルの壁を越えた文学批評の土台が必要
※小説の真髄は混沌にある
[ 2006/11/06 21:49 ] non-fiction | TB(0) | CM(0)
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