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言ノ葉ノ花 

余村和明は、『やさしさの精神病理』の世界の住人に見えました。
私は雑誌のスピンオフ(?)を先に読んじゃったので、というかソレをきっかけに読んでみたので、
この作品の印象…もとい、主人公の余村和明に対するイメージが他の読者とズレてると思います。
結論からいうと、彼の“能力”は特殊でも何でもなくて、自身の人間関係に対する根強い不信感が、
まるでその“異能”が発現したかのように、錯覚させる仕掛けが施された風刺小説だったと思う。
余村は、あらゆる“声”(=ヴォイス≒情報)がノイズに変換されちゃう特異な体質という意味では、
社会に“適応”しきれなかったフラジャイルな子供が、そのまま大人になっちゃったパターンかも。

望月峯太郎さんの『ドラゴンヘッド』の、トンネルの奥底の暗闇に恐れ戦く“少年”達も彷彿させる。
昨今はケータイが無いと不安だとか、メールじゃないと本音が伝えられないと思っている子供達が、
急速に増えてきているそうですが、面と向かい合うこと以上に“心”が伝わる手段など無い訳で…。
但し、ナイーブな心の持ち主には、そのダイレクトに伝わる“心”が逆に耐え難いのかもしれない。
対人関係で疑心暗鬼になっている余村は、物事を悪い方に悪い方に考えて逃げる癖があるから、
他者の“ノイズ”ばかりが聞こえて、大雑把に言って鬱病的な統合失調症に悩まされるのである。
余村が欲したのは、心の声じゃなくて本音をオブラートに包んでくれるツールだった気がします。
この作品(シリーズ)でケータイが重要なアイテムとして登場してるのは、その証左のような…?

つまり、余村は典型的な信用できない語り手なので、私は彼が語る情報を鵜呑みにできなかった。
大体、そもそものきっかけと余村が回想する母親の“声”だって実際の発話だったのかアヤシイ。

『母親だもの、欲しくないなんて言えなかったのよ』(P42)


二重括弧だしね。
そして、シリーズという文脈ではケータイ同様、“母親の呪縛”が設定の根幹に関わっています。
余村自身のコミュニケーション能力の未熟さが、彼の心のストレスの根源的な問題なのであって、
『声』の有無はあくまで付随的な問題に過ぎない、とシニカルにストーリーが進行するのが面白い。
そして、雑誌掲載作品を読めば明らかなように、砂原さんは確信犯的にこの設定を企んでいる。
『声』に安易な答えを与えないで、読者に想像の余地を残しているのがこの作品の醍醐味です。

私は、雑誌掲載のアキムラカズヨ(?)の境遇が萌えるから、余村に対してイジワルだな(笑)。
いや、余村が精神的に追い詰められていく心理サスペンス的な要素はとても面白かったんだけど、
攻めが温厚な年下ワンコ攻めだったから、私的にはBLの萌えが皆無なのが最大の敗因デス…。
今回の雑誌掲載のスピンオフが無かったら、一生読まなかったことでしょう…。

そして、『言ノ葉ノ花』と『言ノ葉ノ世界』の関係はスピンオフというよりは、パラレルですね、多分。
設定が設定だけに思考実験的なBL作品だから、アナザー(裏?)ルートも存在するんでしょうな。
私は、アキムラカズヨ(?)バージョンの底なし沼的な、ドロドロバッドエンドルートが読んでみたい。
ディアプラス的にはアウトだろうけど…。

<作品データ>
・砂原糖子『言ノ葉ノ花』(三池ろむこ・画、新書館ディアプラス文庫)2007.9
言ノ葉ノ花 (新書館ディアプラス文庫)言ノ葉ノ花 (新書館ディアプラス文庫)
(2007/09/10)
砂原 糖子

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[ 2009/03/22 20:23 ] novel BL | TB(1) | CM(0)
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