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エンドゲーム 

無理を通した割に、道理も引っ込めなかった顛末だと思う。
ヒコさんの作品はいつもBL的なお約束を踏み外しているように感じるが、今回は特に異質だった。
愛情の欠片を求めて赤い糸を手繰り寄せても、手繰り寄せてもその先の相手は不在のままである。
その糸は切れてはいないのだけど捩れたままで、その捩れを解そうとすることが誰にも出来ない。
否、ソレが出来るかも知れない唯一の人物は透なのだが、彼は最後まで己を律してソレを許さない。
透(達)の過失は決して許されるものではなく、一読者として私自身が彼らの行為を許せない。
だから、突き放して言ってしまうとこの物語は当然の帰結(エンド)だったと思うのだ。

但し、擬似親子関係を逸脱して恋愛関係の成就に固執する克哉のゲームはエンドレスに見える。
彼が諦めない限りこのゲームに終わりは無く、粘り強さに定評のある年下攻め本領発揮の場かも。
私は何度も言うように年下攻めを好まないのであるが、この話は受けが遠すぎるから大好きだ。
両者の間の溝は深く、流れている時間の壁は厚く、手に届く距離にありながら心は近づけない。
こういう阻まれ方は、不謹慎だけど正直かなり萌えるんだな(笑)。

透と克哉の、二人の道程は傍目には非常に険しい。
とはいえ、彼らの培ってきた日々の悲喜交々に対する透の最後のコメントが“正解”なんだと思う。
人の道を踏み外しても、幸せはある(知覚できる)のだという言葉が何とも眩しく何処か面映い。
終始一貫して、ビターテイストのヒコさんだった。

<作品データ>
・山中ヒコ『エンドゲーム』全2巻(新書館ディアプラスコミックス)2010.8、2011.1

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[ 2010/12/31 03:23 ] comic BL | TB(0) | CM(0)

欲しがりません収穫までは 1巻 

私が(気まぐれに)マガビを買うようになったのは、実はセクピスと倉科先生のせいである。
殊に倉科先生に登場する“浅野”にハマり、腐病を更に拗らせたのがこのブログを始める1年程前。
それまでも、ルチルやクラフトやディアプラスは読んでいたが、マガビは何気に殆どスルーだった。
(ああ、あとユキムラさん!!ユキムラさんの『不思議飴玉』もほぼ同時期にハマッたのだった)
そうして雑誌を読んでいく内に、まさお三月さんや腰乃さんといったお気に入り作家が増えてきた。
でも、私とマガビの関係の歴史は、BL史的には意外と浅いんじゃないかと思う。

とまれ、マガビ掲載作品はたまに強烈な腐の魔物が棲んでいると思うのだ(笑)。
他のBLレーベルではあまりない、強い中毒性を孕んだシリーズがたまに登場するから非常に困る。
見た目はフツーなのでドカンとした萌えは来ないのに、ジワジワ心を浸食してくる魔性のBL作品。
トラップに嵌められたと気づいた時にはもう遅い…何故かマガビでばかりそんな作品と出会う。
今まで自覚してなかった(orしたくなかった)新たな萌えを前に、逃れられなくなるんだよね。

今年は、今日ご紹介するこの作品がそうだった。
今まで全くノーマークの著者だったのに、この農高ほのぼのBLで気づけば心全て奪われていた。
天然×天然の煮え切らないボーイズライフストーリーなのに、二人が可愛いくてしょうがないのだ。
気心知れた仲間達もみんな可愛くて、彼らのスローライフだけで満足してる自分がありえないっ!!
「かぁっ!」とか「くっ!」とか「ひゃあ!」とかキモい独り言呟きながら、何度も再読してるのだよ。
…呆れるくらい怖いだろう?

天然同士なので、ラブの方は本当に超スローペース。
雑誌で最終回を読んでみたら、攻めの藤堂が最後まで私の期待を裏切らないカードを出してきた。
やる気の無いグリーンフィンガー持ちと、やる気が空回りしている一生懸命男子のほのぼのラブ。
男子寮とか農業実習とか、男子高生の日常がこんな現実とは1ミリも掠らないことは分かってる!
わかってはいるんだけど、やっぱりたまには可愛いが正義の世界にとっぷり浸りたいんだな。

騙されたつもりで読んでみて欲しい、近頃の私のマイフェイバリットなBL漫画である。

<作品データ>
・舟斎文子『欲しがりません収穫までは』1巻(リブレ出版ビーボーイコミックス)2010.10
欲しがりません収穫までは 1 (ビーボーイコミックス)欲しがりません収穫までは 1 (ビーボーイコミックス)
(2010/10/09)
舟斎 文子

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[ 2010/11/16 02:26 ] comic BL | TB(1) | CM(0)

酒涙雨 

お久しぶりでございます。
ゲームジャンキーモードが一段落し、今はボチボチ本を読み始めております。
ブログも更新しなさ過ぎにも程があったので、また文章を敬語体に戻してみました(笑)。
これはまた、気分次第で変わるでしょうがね…このブログに“一貫性”など無いのです。
来週末からはまた、大神伝という二次元の国へ旅立つ予定。

さて、本日は“期待の新鋭”と銘打たれたホコさんをご紹介します。
以前、ブログで交流して頂いておりましたNさんがお好きな作家さんという認識でありました。
私はと言えば、当時読んだコインランドリーの話が暗くて少し苦手かもと思っておりました。
明けない夜は無いけれど、この夜は明けて欲しくないなという感じのお話だった次第で…。
いやいや、そんなことは下の個別感想で触れれば良いことであります。

こうして見ると、一応BL的にはハッピーエンドなお話が多数を占めております、殆どであります。
が、作中の作品トーンは押しなべて暗く、手探り状態で心許ないロウソクの火を頼りに歩いた先、
次の角を曲がったら何かとてつもない大変なことが起きるんじゃないかと、ビクビクしてしまいます。
ずっとずっと心臓バクバクさせながら、なるべく良い方に転んでくれと祈る気持ちで読みました。

頭を過ぎるは、夢から醒めた夢というコトバ。
以前から多少の自覚はありましたが、私は受けが攻めに対して“ズルイ”お話に弱いみたいで。
高遠さんの犬と小説家~にしろ、月村さんのおとなり@兄CPにしろ、西江さんの作品の大半にしろ、
漫画でパッと思いつくのは館野さんの『長い間』で、いずれも相手を隠れ蓑にしている受けの話。
彼の都合の良い安住の地はいつまでも続く筈はなく、そんな不安を恐れつつも一歩踏み出せない。
いつかしっぺ返しが来て、不安は現実のモノとなり、醒めた夢の先の暗闇に沈んでいくような恐怖。
ホコさんの作品に付き纏う“影”の正体もコレで、最後の最後まで気が抜けない顛末なんですよね。
否、結末を迎えても尚、その続きは余談を許さない感じ。

こういう濃密な作品に触れるのは久々で、心臓の軋む音が今もまだ止みません…。

□楽日
□酒涙雨
別個の作品と言っても良いのですが、実は同じCPの話。
私の好物のずるくて小心な受けが出てきて、彼は攻めに期待を寄せつつも彼に怯える話。
彼の攻めに対する“負い目”は、彼の彼なりの一生抱き続ける恋情に近いのかもしれない。
今回の収録作品中、一番好きです。

□蝉声
シンデレラストーリーにおける魔法使いのお婆さんが、黒メガネ+坊主の変人男だった!!
かつて自分が踏まれた轍がいつしか自分が踏んだ轍となり、そこから一歩も踏み出せない受け。
いや、最終的には一歩踏み出す手を差し伸べてくれる王子様が彼にはいるのですが…。
王子様が既婚者なので、彼(と読者である私)の不安はやっぱりイマイチ拭い去れないのです。
つ、辛い。

□Chocolate Soldier
高校生同士の初々しい物語なんですが、どことなく「最後の一葉」的な切なさを感じます。
彼の生きる理想であり続ける為に走り続ける攻めと、一途に彼を思う地味メガネ受け君。
お馴染みの些か懐かしさすら覚える定番設定なんだけれど、心が擦り切れそうになるのです。

□ランドリーム
あまり醒めて欲しくない夢の、幻視の、話です。
ダメだ…この感情を言葉にするには荷が重過ぎます。
ある意味、一番読んで後悔するお話かも…。

□食わず嫌い
受け攻め双方(どっちがどっちか不確定…)、読者に手の内を晒さない二人の男の話。
食わず嫌いなハンペンの理由が、蓋を開けてみるととても可愛くて一番萌えがある顛末かと。
二人ともいい年こいてるので、一番安心して読める作品なのが何とも…おでんが美味しそう♪

□春の嵐
楽日+洒涙雨、番外編。
こここんな可愛い後日譚とか、ああああ本当にありがとうございます。
春満開なのにやっぱりネガティブなのが、堪りません♪

□手と手を合わせて
Chocolate Soldier、番外編。
別の道に、矛先が変わっていく二人の若さ故の柔軟さがまた堪りません♪

・ホコ『酒涙雨』(幻冬舎バーズコミックスルチルコレクション)2010.9
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(2010/09/24)
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[ 2010/09/25 16:51 ] comic BL | TB(0) | CM(0)

嘘つきは紳士のはじまり 

ゲイにせよヘテロにせよバイにせよ、かけがえのないパートナーと付き合う矛盾は常に存在する。
既婚者であれ独身者であれ、自他双方に忠実/誠実に生きるというのは何処か無理があると思う。
加えて、社会的通念や制度や世間の眼もあるから、我々が自由な恋愛を謳歌するのは案外厳しい。
最近立て続けに読んだBL作品は、いずれもこの“矛盾”と自由恋愛のリスクを突き詰める話だった。
他作品が相手に誠実と覚悟を求めるのに対し、この作品は一貫して自分も相手も“欺く”話である。
“嘘”をつき続けることで自己の欲望に忠実に、複数の相手に誠意を貫く異色の顛末が面白かった。

子持ち既婚者の癖にゲイで、己の生徒に手を出すいけ好かないWASPを憎めないのは訳がある。
彼の不実は一貫して不実故、そういう意味では逆説的に公明正大でフェアな男でもあるんだな。
彼の嘘には緩衝材のような効果があって、彼の相手が抱えている“矛盾”を吸収してしまうのだ。
最後は彼の浮気が免罪符となり、相手の側にとって都合の良い逃げ道を用意している側面がある。
別に浮気や不倫を正当化するつもりはないけれど、この話では彼の浮気行為がBL的肝なんだな。
彼の浮気には通俗的イメージとは異なる“意味”があるから、凄く面白い作品に仕上がっている。
ラブコメディというよりは、ヒューマンコメディといった按配。

表紙の二人の関係は最後まで平行線のままで、だから割と“長く”続いているんだと思う。
どっちも負けていないし、どっちも落ちていないし、最後の最後までクールで喰えない二人だ。
今後も二人の間に波乱は起きないだろうし、だからこそパートナーシップを維持できるのだろう。
ハスキンス教授も、ジョナサンも、教授の奥さんもリスク込みの自由を選んだ人物なんだと思う。
自由とは選べる人間だけが得られるのではなく、何をおいてもソレを求め続けるから得られるモノ。
立場や境遇や性癖を逃げ道にせずに、嘘をつき続ける教授はだから非常に紳士的なのであろう。

<作品データ>
・松尾マアタ『嘘つきは紳士のはじまり』(茜新社EDGEコミックス)2010.8
嘘つきは紳士のはじまり (EDGE COMIX)嘘つきは紳士のはじまり (EDGE COMIX)
(2010/07/23)
松尾 マアタ

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[ 2010/08/11 22:28 ] comic BL | TB(0) | CM(0)

八月の杜 

“八月の杜”で検索したら、ちくま学芸文庫のの森有正のエッセイも何故か一緒に引っかかった。
うっかり、読みたくなっちまったじゃないか!!アマゾンめ、こういう商売が本当に上手いな(笑)。

滅多にお目にかかれないマイフェイバリットor神作家さんの新刊が、今年はホントーによく出てくる。
もう何度もネタにしているけれど、本気で私の命運/数が尽きてきている予兆なのかもしれない…。
ってくらい、ピンポイントでガツガツ出てくるのよね…あとは、草間さんのBLが出ればパーフェクト。
恒例の年間マイベストは、今年は(読了小説少ないし)コミックスを中心にしてしまうかもしれない。

さて、今回は二年ぶりのTATSUKIさんの新刊(私のHNと同じなので、大変紛らわしい……)。
バラエティに富んだ前作の短編集も大好きだったけれど、今回のは萌えに萌えた連作集だった。
メガネで鼻持ちなら無い“お兄ちゃん”が、ツンケンと弟をいびり倒しているシーンが堪らんかった。
久々に理想の“お兄ちゃん”受けに出会ったヨ!彼こそ、堂崎家の“恥”的イベントに遭遇すべきだ。
昔から気に食わないライバルがいて、その男に骨の髄までしゃぶられてしまう展開まで妄想補完。
作中には全く描かれていないのに、やおいの幻視力でここまで見えた気でいる自分がキモい(笑)。
とまれ、妄想を少しでも現実に近づけるためスピンオフ希望のアンケをマーブルさんに送るつもり。
いつか、実現しないかな?

冗談さておき、ヘタレ坊主×ツンデレ都会っ子(リバの空気十分!)の高校生CPも勿論可愛かった。
本来なら、このクライマックスは私的“禁じ手”なので、物語に多少の不満が残るハズなんだけどね。
今回はタイトルから、ターニング・ポイントの時点で二人の関係が“木陰”に入ることは予測出来たし、
“全て”の登場人物達が愛しくて、この田舎町のアットホームな空気が懐かしくて絆されちゃったよ。
私は日陰者達のBLが好きで、更に言うとSHOOWAさんの作品のような向日性のBLが好きだから、
この手の日常の延長上の、光射す場所の端の木陰を歩んでいく話が好きで好きでしょうがない。
好物であり、弱点であり、いつもいつもいつも求めている理想のBLの顛末なのである。

とにかく、大好き。
昨日買ったばかりだけれど、何度も何度も読み返しては一人身悶えている。


<作品データ>
・TATSUKI『八月の杜』(東京漫画社マーブルコミックス)2010.6
八月の杜 (MARBLE COMICS)八月の杜 (MARBLE COMICS)
(2010/05/20)
TATSUKI

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[ 2010/05/20 02:52 ] comic BL | TB(0) | CM(0)
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Author:tatsuki
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