フリージング アイ 

とうとう、新刊書籍で入手できる華藤えれなさんの作品を全て読んでしまいました…。
結論から言うと、私は華藤さんの小説が大好きデス!合わなかったのは、『上海夜鳴鳥』のみです。
どの作品にも突っ込みたい部分が無きにしも非ずなのですが、今となってはソレすらも“魅力”かと。
物語(エピソード)やBL設定のバリエーションが決して多い訳ではなく、キャラ萌えをする訳でもなく、
なのに、私は彼女の作品に魅了されっぱなし!…その独特の小説の“型”が、心に深く沁みるのだ。
勿論、文章の“美”とか“整”という意味では、華藤さんを凌ぐ小説家はBLに限定してもいるとは思う。
が、夢と現の狭間の、肉体と魂が半ば分離⇔融合しているような幻惑的な場面の描写においては、
彼女の“(文)才”は殆ど他の作家の追従を許さない独壇場と化しているように、私には見えます。
あえて“萌え”と言うなら、(初期スレイヴァーズ作品を除き)一貫して私は文章“萌え”なんですよ。

ということで、最後に“温存”していた『フリージング アイ』をご紹介します(笑)。
スレイヴァーズシリーズ読む前にスピンオフを読むのも何だかな、と思っていたので遅くなりました。
読後の印象は、スレイヴァーズのノリというよりは、華藤さんお得意の京都モノに近かった気がする。
というか、表題作は軽めの“賭け事”コメディなので、『コーリング アイ』の方が本編に見えました。
オヤジ(年齢というよりは精神が…)攻め×クールビューティー受けの、エリートリーマン同士です。
スレイヴァーズのあの二人に比べると遥かに“健全”というか、余計な遠回りをしない展開でしたネ。
サクサク進むので、読みやすいし飽きが来ない!

ややシリアスの『コーリング アイ』では、お能の演目で有名な「道成寺」がベースに敷かれてます。
業火に囲まれる悪夢にうなされる早瀬は、試用期間中の恋人・若宮に伴われて故郷の京都に帰る。
彼の記憶の底に沈む情念の在り処、恋愛を忌避する“呪”を解く為に、二人は核心を探る旅に出る。
若宮という優しく愛しい存在に出会い、自身の中にも焦がすような熱い恋心があることを知る早瀬。
母の二の舞を踏むまいと己を律し(or祖母によって縛められ)てきた彼は、長年の呪縛を解き放つ。
気丈な早瀬は厳格な祖母を克服し、それどころか、長年のわだかまりすら解消してしまうのですね。
このキツい性格&言葉を浴びせる祖母と早瀬の言葉の応酬が凄まじくて、とても迫力がある(笑)。

とまれ早瀬は、身を焦がすような情念の猛火も、いつか蛇と化すかも知れない恋情もひっくるめて、
懐の広い、時折お茶目なオヤジギャグをかます若宮という男に、その滾る“心”を許されるのですな。
めでたし、めでたし♪

あと、一個だけ。
作中に“群集”という単語が二回出てきますが、これはリースマンの『孤独の群集』のイメージかな?
キーワードのような気もしますが、サラリと受け流されているので、私の只の“直感”なんですが…。
何となし“群集”という言い回しは、日常的な表現ではないような気がするのですが、私だけしら?

<作品データ>
・華藤えれな『フリージング アイ』(雪舟薫・画、幻冬舎リンクスノベルス)2004.12
フリージング アイ (リンクスロマンス)フリージング アイ (リンクスロマンス)
(2004/12/25)
華藤 えれな

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[ 2008/08/20 22:08 ] novel BL | TB(0) | CM(0)

白雨 

真崎さんの小説は、私好みの設定なのに展開駆け足だから勿体無いなあ、といつも感じます。
文章の運び方、もしくはプロットの取捨選択の段階で、微妙に私の萌えを外されてしまうみたい…。
今回の作品もそんな些細な引っかかりというか、気になるポイントというのは何箇所かありましたが、
それでも今まで読んだ3作の中では断トツで面白かった!実は、感極まって泣きそうになりました。

だって、二人の“恋”模様が健全だったんですもん!
先月読んだ腰乃さんや李丘那岐さんの作品も、夏らしいこざっぱりした健全なBLだと感じましたが、
この作品も、夏を舞台にした一瞬の“恋”の煌きが時を経てかけがえの無いモノに転じる物語でした。
校則違反を理由に課せられたボランティア活動を通じて、初めて会話し意気投合した水沢と加賀は、
開放的な気分と運命的な何かを感じて、瞬く間に一線を越えます…が、それはあくまで真夏の夢。
無力で若い彼らでは、恋の情熱だけでは人生を渡りきれず、二人の仲は引き裂かれてしまいます。

ボンボン育ちの加賀と、アルバイトで稼いだ貯金を家賃に充てなければならない水沢の境遇では、
“お金”に対する価値観が違いすぎて、聡明な水沢は二人の関係が立ち行かない現実に自覚的。
親の脛を齧ってる身の上の“バカボン”加賀は、水沢を守りきる盾もなければ親に盾突く武器もない。
畢竟、水沢は情熱だけで全てを押し切ろうとする頭の廻らない加賀を切り捨て、完全逃走を試みる。
パートナーはおろか、自身の身すら守れない二人にとって、これが出来うる限りの最良の策な訳で。

で、年月を経て無事に再会を果たす訳なんですが…。
視点キャラの水沢がその“運命的な恋”を、“人生唯一の恋”と信じているのは仄めかされてますが、
再会後の加賀はコブ付きだし、正体不明に描かれているので彼の心中はなかなか見えてこない…。
が、水沢に会いにきた(迎えに来たと言っても良いと思う)加賀が、唯一携えてきた武器を知るとね、
想定範囲外の彼の実直(一途)さに、「うぎゃああっ!!」って、心奪われちゃうんですよね(笑)。
生まれながらにステータスの高い加賀はもっと高性能の武器も持てるし、選択肢も多い筈なんだ。
なのに、水沢に会うために携えてきたのは当時と変わらない、いえ、もっと強化されたアレなのだ。

通常タイプのオレサマ攻めなら絶対に違う武器を携えて、完全武装して出直して来ると思うのです。
でも、加賀は違った!ストレートかつ健全に腹を括って、世界の中心でも愛を叫べるタイプでした…。
この素朴な再会BLに、私がここまでテンション上げたのはそんな加賀の度量の大きさにあると思う。
私は元々オレサマ攻めが大好物ですが、加賀はそんじょそこらを差し置いて頭一つ抜けてました。
マジでカッコ良かった!ご馳走様です〜♪

<作品データ>
・真崎ひかる『白雨』(陵クミコ・画、幻冬舎ルチル文庫)2008.1
白雨 (幻冬舎ルチル文庫 ま 2-1)白雨 (幻冬舎ルチル文庫 ま 2-1)
(2008/01/18)
真崎 ひかる

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[ 2008/08/04 01:58 ] novel BL | TB(2) | CM(3)

本当のことは言えない 

だらだらずるずると読み続けること約一週間、そんな最悪なコンディションの中でようやっと読了。
出勤途中の比較的涼しい朝方の30分以外、全く活字を目にしたくない状況が続く今日この頃です。
だから、エピソードの詳細は記憶も曖昧だし、正直言ってそれほど面白い作品とは思えなかった。
普段なら感想をスルーするレベルなんですけど、他に読了作品が無いので今回は書き残します。
微妙に辛口だと思うので、本作のファンの方はそのままサクッとブラウザ閉じちゃって下さい(笑)。
先日のブログ通信簿には、もう少し自己主張しても良いと書かれてあったので、出張ってみます!

以下、私がこの小説を気に喰わなかった理由を箇条書きで羅列。
1)攻めがワンコで、しかもストーカー過ぎる。
2)“ゲイ”であるというアイデンティティを、主人公(+彼の近親者)の人生の“障害”にしている。
3)“家族”との疎遠は主人公の人生にとっての決定事項の筈なのに、妙に“未練”がましい。

私が好きなBLというのは、その恋を突っ走る二人の一種無謀とも言える前向きさにあるんですよ。
いえ、後ろ向きでもいいや…兎に角、何かを選んだらソコに向かって突き進む物語が好きなのだ。
が、本作の主人公の向井はどっちつかずで、孤独を引き受けてるポーズだけは示しているけれど、
実際には生涯を共に在ってくれる同性の恋人を夢想し、家族との和解も期待しているように見える。
その割に自らは動こうとせず、人生を斜に構えて諦観し、本命から逃げることばかり画策している。
こういう人物を主人公に据えるなら、最終的に全てを失い路頭に迷うくらいの結末でも良いと思う。
ハッピーエンドは、頼むから与えないで欲しい…私が白馬の王子様の登場を夢見ちゃうからね…。
いや、この場合はご主人様一筋のご飯を作ってくれるワンコ様かな?まあ、どちらでもいいけど。
ネガティブ思考の時の自分と似ているキャラだったから、何とも言えないモヤモヤを感じるのです。

あと、“家族”との不和の原因と主人公の“ゲイ”アイデンティティを安直に絡めているのがなあ…。
ネガティブ思考な向井自身が、自分のマイノリティな性質が悪いって思っているフシもある訳で…。
向井家の歪んだ観点は、向井がゲイであろうか無かろうが変わらずに横たわっているモノでしょう。
こういう血統主義で塗り固められた一族は、セクシャリティはおろか、相手側の出自や病歴などで、
彼らの(身分的な)尺度を計り続けるし、(身分的に)差別していく人々の一派に見えるのだけどね。
すっぱり縁を切った方が身のためだし、家族と繋がり続けたいなら自分の本性を誤魔化し続けるか、
あるいは“家族”の間違った観点を指摘し、説得し続けるのがスジだと私は思うんですけどねー。
ソレが出来れば苦労は無いというか、家族問題はデリケートな部分を含んでいるのは分かります。
が、譲れない部分については、やっぱり夫々が腹を括って解消していかなければならないと思う。

自己主張というより、何だか説教クサイね(笑)。
というか、駆け落ち相手と再会する小さなエピソ−ドだけで終わる短編だったら、良かったのに…。
要するに、暑くて読書力が落ち、(ストーカー)ワンコじゃ何の潤いにもならなかっただけです(笑)。
ご清聴ありがとうゴザイマシタ…今回は青年のオバチャンのウザイ主張って感じでしたね。

<作品データ>
・椎崎夕『本当のことは言えない』(街子マドカ・画、幻冬舎リンクスノベルス)2007.11
本当のことは言えない (幻冬舎ルチル文庫 し 1-2)本当のことは言えない (幻冬舎ルチル文庫 し 1-2)
(2007/11)
椎崎 夕

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[ 2008/07/28 23:45 ] novel BL | TB(0) | CM(0)

罪に眠る恋 

毎日ムシ暑くて気力減退…ちょっと、更新サボってしまいました…。

今年の私の節約目標は新刊ノベルスの購入を我慢するコトだったのですが、今回は衝動買いです。
今月の「小説ビーボーイ」に掲載されていたプレビューが好感触だった為、思わず買っちゃいました。
しかも、内容は想像以上に面白かった!てか、マイ萌え設定+アイテムが完備されてて大満足♪
予定外の買い物をして想像(価格)以上の萌えが味わえたのは、本当に久しぶりな気がしますヨ。
何はともあれ、ご馳走様でした〜♪

剣道(+胴着)萌え、高校男児の坊主萌え、(半袖)制服萌え、ツンデレ萌え、チビっ子受け萌え…と、
もうビックリするくらい私的萌えが出揃ってて、しかも麻生海さんの挿絵が可愛くて又堪らん感じで、
もうコレだけで私のキモいテンションは上がりっぱなしなんですが、物語も良かったんですよー。
私は、李丘さんの作風には少し舐めてかかってたトコロがあったので、余計だったのでしょうけど。

えーと、刑事ドラマ風味のBLです、ミステリでもサスペンスでもなくて人情重視のヒューマンドラマ。
ミステリ仕掛けの犯人割り出しじゃなくて、あくまで事件の背景を追って犯人を絞り込んでいく展開。
今回の連続殺人事件は、加害者の“情”と被害者の“悪”とヒロインの“後悔”が絡んでおりまして、
まあ、ご都合主義と言えばそうなんですけど…事件追跡の過程で、虎太郎ちゃんも過去と向き合い、
かつて高校時代のライバルで、現在俄かコンビを組んでいる久竜に対する積年の思いを告白する。
このお馴染みの展開が、変に設定を捏ね繰り回した昨今のBLより遥かに“健全”で味わい深くて、
基本的に可愛いBLが好きな私には、とても心地良かったです。

ちなみに、二人が本懐を遂げるのはラストの一回だけなので、ラブシーン自体はとっても薄いデス。
その代わりと言っては難ですが、その筋のお店で潜入操作する為にゲイカップルを偽装していたり、
何処へ行っても隙を見せるヒロインの子猫…じゃなくて、子虎ちゃんがアイドルよろしくモテモテで、
でも、竹刀を持たせたら超一流の白虎で、いざとなるとピリリと辛い山椒になるのが美味しかった。
脇役もお調子者の3枚目の同僚とか謎の多いホームレスとか、キャラクタ配置も上手かったです。
チビッコ乙男ツンデレ系の受けに萌えの自覚がある方は、何はともあれ買って読んでみて下さい!

<作品データ>
・李丘那岐『罪に眠る恋』(麻生海・画、リブレ出版ビーボーイノベルス)2008.7
罪に眠る恋 (B-BOY NOVELS)罪に眠る恋 (B-BOY NOVELS)
(2008/07)
李丘 那岐

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[ 2008/07/15 20:09 ] novel BL | TB(2) | CM(4)

ビター・スイート・レシピ  

実は私、昨年末にうっかり某○ンカ堂にて編み物セット(毛糸+針)を衝動買いしていたのでした。
何故か無性に手芸@編み物熱が生じ、ド素人の癖に自作のひざ掛けなんかを目論んでました…。
結果は、勿論モチーフ2個で挫折(←早っ!)、しかも同じモチーフの筈なのに大きさが全然違う。
もう、この時点でやる気ゲージは0になり、未だ手付かず状態の毛糸玉が6個も籠の中で眠ってる。
今年は、もうちょっと目標を下げて再挑戦(リベンジ)できると…いいなあ…(遠い目)。

ちなみに私の実家では、電話や卓袱台、日々増殖し続ける植木鉢にレース編みが敷かれてます。
が、これらの作品はほぼ全て未完成…下手したら、針が挿しっ放しで無頓着に放置されています。
製作者曰く、丸いモチーフばかりで飽きたから四角いモチーフに路線変更、それもまた飽きたから、
次はお花のモチーフという具合で、途中放棄(あと少しで完成?)のレース編みが溢れかえってる。
とまあ、ウチは家系的に何事につけこんな感じデス…(私の方がハマッた時は一直線なんだけど)。
母は私以上の漁書家ですが、兎に角飽きっぽいので読書のジャンルもいつもてんでバラバラです。
鬼平コンプリート+時代小説オンパレードが一転、チャンドラーやらのハヤカワHB一色だったり…。
そういえば、正月に帰省した際にKカミHロミさんの作品群が大キライっ!って宣言していたような?

さて、余談が長すぎでしたが本日は月村さんの新刊の感想です。
私は今月はどちらかというと月村さんよりも桜木さんが楽しみだったのですが、結果は昨日の通り。
月村さんは相変わらず、人生に躓いた若者に優しく手を差し延べる王子様が登場する物語ですね。
デビュー当時から一貫して、ほぼ同じテーマを書き続けてるBL作家さんの一人だと思うのですが、
淡々とした日常の延長上の物語に独特のカタルシスがあって、読者の心を掴むのは流石の一言。
この路線の、即ちジュブナイル風味のBL作家の第一人者として、手堅い作品に仕上げてくれます。

今回の主人公の健太君(別作品に同名キャラがいたような?w)の躓いた理由とか過程というのは、
私もかつて辿ったルートであり、今でもこの種の躓きはいつ起こるとも知れない怖さがあります。
が、そんな主人公が王子様に救われて安直なハッピーエンドにしないのが、月村作品の醍醐味。
この手の問題は誰もが抱えているモノで、最終的には自力で克服していかなければならないモノ。
が、克服の手段や過程や時間には個人差があり、その補う者として攻めが受けの心を攫う。
立ち上がって前に進むのは健太自身でなければならず、宇佐美はあくまで優しいセコンドなのだ。
健太の“お兄ちゃん”は厳しくて真っ直ぐなセコンドだったから、逆に彼には辛かったんですよね…。

受けの受難に対して、攻めは本質的にクララにとってのハイジでいなければならないと思うのです。
が、現実的にはクララに高性能の車椅子を買い与えて、自己満足している攻めが多すぎるんだな。
“娯楽”としてはソレはソレで楽しい部分もあるけれど、私が受けならやっぱりハイジが“理想”です。
そう、月村作品の攻めは出過ぎたマネを一切せず、一番欲しい言葉や激励をくれるキャラだから、
私のような心貧しい人間には、ちょっとほろ苦いけれど殊更よく効く滋養強壮剤になるんだな(笑)。

いつものように、つくづくBL読んでて良かったなあ、幸せだなあって思える月村作品でした。
ご馳走様です!

<作品データ>
・月村 奎『ビター・スイート・レシピ』(佐倉ハイジ・画、新書館ディアプラス文庫)2008.7
ビター・スイート・レシピ (新書館ディアプラス文庫 192)ビター・スイート・レシピ (新書館ディアプラス文庫 192)
(2008/07/10)
月村 奎

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[ 2008/07/11 22:09 ] novel BL | TB(0) | CM(0)
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Author:tatsuki
気になる方は、こちらをどうぞ。
アサッテなBLが好きです♪
英語版ミラーブログ(更新は期待しないで!)


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