先ほど読了しました。
恋愛要素はかなり薄口な印象でしたが、淡々とした雰囲気が素敵な一品でした。
御馳走様です♪
今回の二人は、職業的には映画配給会社の宣伝マン×若手実力派映画監督で、
性格属性的には
へたれ×ツンデレ美人…つまり私の大好物なキャラクター設定です(笑)。
攻め視点の作品だった所為か、この主人公は攻めだけど割と乙女志向な持ち主でした。
逆に言うと、受けの視点が全く無かったので、彼の方には少し感情移入しづらいです。
この主人公の望月は、当初は美人な明神を仕事上の相手として割り切るつもりでしたが、
あまりに自分の理想のタイプの美人ツンデレ青年だったため(←つまり多分M気質)、
ある日、とうとうアルコールの勢いに乗じて無理やり強引に
(?)彼を抱いてしまいます。
(これはあくまで望月視点の話でして、彼は翌日に自分の行為を反省するのですが、
傍から見れば、明神側も誘い受けモードだったし、さして抵抗もしていなかったので疑問符を。
むしろ、私には彼はとても気持ちよさそうに身を委ねていたように見えました。)
とまあ、兎にも角にも望月の方は深く反省して、仕事上での名誉挽回に励むのです。
が、辛口映画評論家による思わぬ妨害で、殆ど成功しかけていた興行企画は一挙に暗転、
敏腕宣伝広報マンとしてはここが試練の時、つまり踏ん張りどころでございます。
彼は最愛の男とその映画作品を、不当な風評から守り切ることができるのでしょうか?
そして、二人の微妙な関係は、
恋愛<BL>的局面に移行することができるのでしょうか?
さて、この作品のクライマックスが大変気になりますよね、特に後者の方…(笑)。
抑え気味にあらすじを書いたつもりでしたが、思わず最後を煽ってしまいました…。
実はこの作品、ストーリー自体は大した展開を見せません、終始淡々としております。
望月的試練の時も、現実的には殆ど
運と
明神の人脈で簡単に凌げてしまいますし…。
要するに、真の名作の前にはいかなる妨害も小細工も通用しないというコトなのでしょうか。
結局望月は、へたれた属性なまま美人映画監督明神の前に全面降伏して幕を閉じます。
(だって、本当に彼の見せ場がなかったんです…最後まで…)
ちなみに、望月の見せ場を颯爽と奪ってしまったのが、澪さんという女性キャラです。
BLにしては珍しく、この女性キャラが大変魅力的に描かれてはいたのですが…、
小説としては、ストーリー展開上かなり
アンフェアな扱いだったと思うんですよ。
彼女はこの作品のキーパーソンだったにも関わらず、登場するのは物語の殆どラスト。
それまでストーリー上で、彼女に関する情報は全くの皆無、本当に不意打ちなんですよね。
小説は勿論、かなりへその曲がった映画監督だってこういう時間軸のプロットは作らないかと。
そんな彼女に、見せ場を全て奪われてしまった主人公には思わず同情してしまいます。
(穿った見方をすれば、彼女は
尺の都合上つけ加えられたエピソードなのかもしれません)
さて、結論です。
作者のいおかさんが一切明言していないので、私の解釈の妥当性は微妙ではありますが、
恐らくこの小説自体が、明神監督の次作品のプロットであるというメタ構造的構成が、
密かに仕組まれていたと言えるのではないでしょうか?
小説全体が、冒頭で語ったように淡々とした印象で、いつものいおかさんとは違う雰囲気です。
私としては、小説というよりは、一本の静かな映画を見たような気持ちになりましたし、
そういう意味では、かなり巧い作りになっていたと思います。
何はともあれ、まったりした気分に浸りたい時には大変オススメの一品です。
そして、へたれハンターには必読の書かもしれません…。
<作品データ>
・
いおかいつき『
恋愛映画の作り方』(
高久尚子・画、徳間書店キャラ文庫)2006.12
毎度コメントありがとうございます!
明神の気持ちは、彼が映画監督だから抑え気味に描かれていたのかなと思っています。
明神は、冷静に映画監督の目で望月を観察&会話していくウチにハマッたのかなと。
(身体の相性が良くて、男の矜持にこだわりが無い人間だったという解釈もアリですが)
まあでも、読者にはかなり不親切な設計だったとは私も思います(笑)。
私は小冊子でこの点フォローされるんじゃないかと期待して、応募してみるつもりです。
ちなみに↓でコメントして頂いたmimuさんの感想記事も大変素敵です。
はーこさんとmimuさん、びっくりするくらい感想が共通していますよー。
お二人の感想が無ければ、今回この本は購入を見合わせるつもりだったので、
そういう意味でも大変感謝しております!
素敵なBL小説を紹介して下さって、ありがとうございました♪
ではでは。